チェロの体系を翻訳した感想を記す ― 2020/07/26 18:10:32
チェロの体系を翻訳した感想を記す。
全体
- ASTA String Syllabus (Revised 1986) と the Royal Conservatory Syllabusという、もとになる資料はあったにせよ、全体をまとめ上げたことは賞賛すべきことだ。
- その後の精査は私からは見えない。おそらく、上記2団体やほかの団体には、精査して改訂された同様の資料はあるに違いない。
- ASTA はおそらく American String Teachers Association (www.astastrgins.org) のことだろう。the Royal ... は、英国の王立音楽院の体系(シラバス)のことだろう。後者は、右記リンク先にあるシラバス群(rcmusic.com)から Cello Syllabus の部分をクリックするとダウンロードできる。ところで、syllabus の語源はラテン語なのだろう。syllabus の複数形が syllabi となることをはじめて知った。ASTA のほうでは、Curriculum と Syllabus が書籍として出版されているようだ。
- シラバスということばは特に大学の授業計画などでおなじみのことばだが、あえて「体系」と訳してみた。体系ならばむしろ curriculum のほうがふさわしいかもしれないが、まあいいだろう。
グレード別記述
- ここの訳は戸惑った。チェロのこともほとんど知らないし、英語も疎いので、何をどうしてよいものやらチンプンカンプンだった。XII の「耐久試験性」ということばはあまりにも工業製品めいているので「持久力」ぐらいのほうがよいと思ったが、あえて工業製品としてチェロの技量を扱ってみた。いっそのこと、グレードということばも「等級」と工業製品っぽくしてよかったかもしれない。
- ネックポジションと遷移ポジションということばがよかったかどうかは議論の余地がある。
- このグレードと、王立音楽院のシラバスのグレードを比べるのは興味あるが、もう私にはやる元気がない。
教則本、練習曲、音階
- 日本なら、教則本としてまっさきに鈴木鎮一のチェロ指導曲集が出てくるはずだがここになかったのには驚いた。どうせ日本の教則本など相手にされていないのだろうと拗ねてしまったが、そのあとで小品集と曲集の項にしっかり Suzuki ed. とあるのを見て安心した。どうも英米人は、スズキ・メソードを教則本としてではなく、面白い曲がグレード別に多く掲載されている曲集として見ているのだろうか。だとすれば、スズキの指導曲集が教則本ではないとむしろ喜ぶべきことなのかもしれない。
- チェロの教則本といえば、日本では古くはウェルナー、あるいはドッツァウアーということなのだろう。これら2教本はどちらもあるが、英米にはもっといい教則本があるようでうらやましい。なお、日本では翻訳もあるサポージニコフの評判がよいがここにはない。載っていない理由はわからないが、この教本は様々なエチュードの寄せ集めプラス自身の練習曲という構成のためかもしれない。
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