フォーレの「ピアノとオーケストラのための幻想曲」を調べる(21)2020/07/01 23:00:00

今回は練習記号20、476小節から調べる。練習記号はここで最後であり、したがってこの幻想曲を調べるシリーズもこれで最後だ。忙しかったピアノは 480小節でいったん力をためて最後の爆発に備える。そして結尾のコード進行はどうなるのだろうかと心配になるのだった。下記は482小節から485小節までのピアノと弦5部のスコアである。
フォーレ「ピアノとオーケストラのための幻想曲」第482小節
484 小節では G から G7 に推移しているので第1部と同じように B7 に行ったら困るだろう、と心配したが、485小節では思いがけず E に解決するのだった。そして最後にはGの和音におちつき、ピアノはオクターブのトレモロによるト長調の音階を連打して曲を終える。
それにしても、フォーレの1曲だけでこんなにブログを使ったことはなかったが、少しずつこの曲の相貌が見えてきたような気がする。それでもまだまだ見えていなかったところはあるだろう。この曲を実演したり、録音したりする演奏家が増えることを祈って結とする。

ウェルナーの教則本とにらめっこする2020/07/02 23:00:00

Werner 教則本 pp.45-46
チェロの練習でウェルナーの教則本とにらめっこしている。相変わらず私が持っている版は誤植が多いが、誤植を見つけるのも勉強のうちと思っている。もっとも、誤植にとらわれて練習がおろそかになっているともいえる。

さて、このあいだの稽古で見てもらったのはハーフポジションの練習の後半で、No.14の練習曲、No.15の練習曲、そして重音とトレモロ(バッテリー)の練習である。この重音とトレモロは、すでに前のページで実施済みではないか、同じ練習を二度行わせるのはまったくもって困る、と怒って比べてみた。この場合のページは IMSLP にあった版のページで、私の持っている誤植だらけの出版社の版では それぞれ 55 ページと56ページに対応する。よく見たら、同じではなく、スラーの有無、およびスラーの範囲が違うのだった。確かに後のほうのページにあるほうが難しくなっている。特に、p.46、青色で囲った部分の2小節のスラーはこれだけの音を一弓で弾けというのか、というぐらい挑発的な練習である。もちろん、わたしは最初の1小節でほとんどの弓を使い切り、残りをしょぼくれた弓で弾いて先生に呆れられたのだった。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタ集の楽譜を買う2020/07/03 23:00:00

私がチェロを始めた理由はどこかに自分のホームページかこのブログに書いた気もするが、あまりにもくだらない理由なので書かない。もし改めて書いたらば、こんな理由でチェロを始めたのかと憤る人が多いかもしれない。

とはいえ、成り行きでチェロを始めたら成り行きで弦楽合奏団に居ついてしまい、そのまま30年ほどチェロをその合奏団で弾いてきた。この数年はこの合奏団を休んでいて、別のオーケストラで弾いてきたが、今はこのオーケストラも退団した。今は自宅でチェロの練習をして、月2回チェロの先生のもとに通っている。

チェロを趣味で弾いている皆さんに聞きたいのだが、いや、別にチェロでなくてもヴァイオリンでもヴィオラでもほかの管楽器でもいいのだが、自分が趣味で弾いている楽器をソロで披露したいと思うことがあるのだろうか。

私はといえば、弦楽合奏団でトゥッティで弾いているのが一番性に合う。腕の下手さがばれないからだ。下手さがばれないというのならばオーケストラのチェロパートのほうがもっとばれないはずだが、オーケストラの場合は他の楽器に埋もれてしまうという問題があり、これはこれで残念に思っている。自分勝手である。

埋もれてしまわないようにするにはソロで弾いたり室内楽を弾いたりすればいいのだが、そうすると腕がモロにばれるから困ってしまう。

あるとき、弦楽合奏の本番があり、チェロは私のほかもう一人、腕の立つ相棒が来るはずだったのが本番ドタキャンされ、私一人でベースを支えなければならなかったことがあり、本当にこのときは往生した。実はこのとき、ラストの曲にはチェロのパートのほかコントラバスもあり、コントラバスはもともと来ないことがわかっていたので、あるときはチェロを弾きある時はコントラバスを弾くというとんでもないことをしていたのだが、そんなことをわかっていたのは多分コンサートマスターだけだった。ちなみに、ドタキャンした相棒のことだが、もとからその相棒はドタキャンが多いということがわかっていたので来ないことも想定の範囲だった。だから一人でパート移動をしてもいいようにチェロの譜面にコントラバスパートも書いておいて準備もしておいたのが私のひそかな自慢である。

話がずれた。弾きたい曲がないというのが私の今の現状である。腕が上がれば室内楽に挑みたいとは思っているが、腕がないのと相方を見つける苦労が多いのとで諦めている。

以前のブログでチェロ名曲集は持っていないと書いた。名曲集を持っていないから弾きたい曲がないのか、弾きたい曲がないから名曲集を買わないか、自分でもどちらなのかがわからない。

そんなこともあり、久しぶりにチェロ名曲集を買うことにした。ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタ集である。以下はその一覧である。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタホ短調 RV40 を聴く2020/07/04 23:00:00

渡辺和彦氏の「ヴァイオリン、チェロの名曲名演奏」(音楽之友社)という本を私は折に触れて読んでいる。フォーレの後期の室内楽を好きになれない、という氏の個人的な意見に反抗しながら、けっこうおもしろく読んでいる。コラムもいくつかあり、そのうち pp.37-41 は「バロック時代の名作」が開設されている。ここでまず、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲について簡単に解説されたのち、チェロについてこのように触れている。

ヴィヴァルディではチェロ・ソナタとチェロ協奏曲も見落とせない。チェロ・ソナタはメロディのきれいな曲が多く、おけいこ名曲として人気のイ短調以外の曲も鑑賞用にもっと聴かれてよい。

私が思うに、ここでのおけいこ名曲として人気なのはイ短調 RV43ではなくてホ短調 RV40 のほうではないかと思う。スズキメソッドで曲が載せられているのはホ短調のほうだからだ。ちなみに、私が持っているこのチェロソナタの演奏は、チェロと通奏低音(チェンバロと通奏低音)のものはまったくなく、フルニエの協奏曲に編曲されているバージョンである。もちろん、ヴィヴァルディはチェロ協奏曲も作っているが、ソナタが協奏曲仕立てになるほど、この RV40 は有名だし、名作だと思う。なお、ヴィヴァルディの真作と知られるチェロソナタは9曲あり、このホ短調のチェロソナタは第5番となっている。今日以降まとめてヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタを概観する。引用する版は EDTIO MUSICA BUDAPEST(EMB)の原典版である。

この作品は4楽章からなる。追って楽譜を提示したい。

第1楽章 Adagio 。同音連続のテーマが耳に残る。主に高音域で歌われる。

第2楽章 Allegro。忙しいがあわてると高貴な雰囲気が損なわれる。弦をまたがる8分音符の動きに注意。最低音の C が響くと、低音フェチの私は喜ぶ。おまけにこの C はナポリの6度を決定づける音なので喜びは倍加する。

第3楽章 Largo。12/8 拍子ということもあってシチリアーノを思い出す。付点8分音符に32分音符というリズムは崩れやすいので、テンポのキープが肝心だ。

第4楽章 Allegro。8分音符の動きと 16 分音符の動きのそれぞれの違いを意識して、メリハリをつける。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタイ短調 RV43 を聴く2020/07/05 23:00:00

ヴィヴァルディのチェロソナタにはイ短調の作品が2曲ある。一つは第3番 RV43 で、もう一つが第8番 RV44 である。今回は第3番 RV43 のほうを聴いてみたい。ホ短調 RV40 とどことなく似ている。

第1楽章 Largo 付点音符主体の荘重な音楽だ。私が持っている楽譜では、1拍めの付点四分音符と2拍めの八分音符で記譜されている箇所は、1拍目を複付点四分音符に、2拍目を十六分音符で弾くように指示がある。2拍めの付点四分音符と3拍めの八分音符で記譜されている箇所も同様である。これには従うべきなのだろうが、あまり重々しくなってしまうのもどうかと思ってしまう。

第2楽章 Allegro 繰り返しが多いことはヴィヴァルディの特徴である。弦をまたいだ低音を響かせるところはなかなか効果的で、この曲でも最低音の C を鳴らすところがある。低音フェチの私にはうれしい。末尾近く、46小節の、スカルラッティを思わせる3度バッテリーの上昇は音程とリズムをきちんととりたい。

第3楽章 Largo 一拍を2つに等分する場合と3つに等分等分する(3連符)場合が混在するので、リズムがよれる恐れがある。Largo の気分で、焦らずに。

第4楽章 Allegro 繰り返しが多いとき、エコーをつけるかどうかが問題となる。昔は、エコーのとおり、二回目は弱くするのが常道だったが、演奏様式の研究が進んだ今は必ずしもエコーをしなければいけない、というものではないらしい。それを踏まえて、頭の古い先生に頭を垂れるときにはエコーをかけておくのが小利口な方法かもしれない。そんなことより、シンコペーションが頻出するので、リズムを自分の中できちんと刻むことが大事だと思う。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタイ短調 RV44 を聴く2020/07/06 23:00:00

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタイ短調 RV44 を聴くことにする。「ヴィヴァルディ:6曲のチェロソナタ」として販売されている版には入っていないと思うが、「ヴィヴァルディ:9曲のチェロソナタ」として販売されている版には入っているはずだ。通算番号でいうと第8番となっている。

第1楽章 Largo 他のヴィヴァルディのチェロソナタとは異なり、最初の3小節と半分は通奏低音のみである。そのあとチェロ独奏がゆっくりと入っている。短いモチーフが全音上がったり下がったりして繰り返すところはヴィヴァルディの特徴がよく出ている。

第2楽章 Allegro poco こちらは少し難しい。シンコペーションが最初からかまされ、そのあとで無窮動の3連符が続く。そしてシンコペーションと三連符がからんだまま前半が終わる。後半はさらに音階で上昇しながら連続するトリルや2オクターブを超える最低音の C から A 線上の E まで、低音フェチの私も満足させるフレーズが繰り出される。もちろん私にはまったく弾けない。

第3楽章 Largo は、付点がところどころ出る以外はおとなしめだ。

第4楽章 Allegro 12/8 拍子だが、6/8 拍子としてとらえても問題はない。リズムで難しいところはないので、流れにうまく乗れるかがカギだろう。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタ変ホ長調 RV39 を聴く2020/07/07 23:00:00

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタ変ホ長調 RV39 を聴くことにする。「ヴィヴァルディ:6曲のチェロソナタ」として販売されている版には入っていないと思うが、「ヴィヴァルディ:9曲のチェロソナタ」として販売されている版には入っているはずだ。通算番号でいうと第9番となっている。

このソナタは変ホ長調だが、調号は♭二つで一瞬変ロ長調かと思う。しかし、実際は臨時記号が記されている結果、曲としては変ホ長調である。これに関連して、次の解説がある。

♭系の短調では現在の調号よりも1個少ない数でした。これは、旋律短音階の第Ⅵ音の半音上昇を音階固有音とみなす考えです。(青島広志「新装版 究極の楽典」p.112)

とはいっても、この曲は長調である。どうしてだろう。

第1楽章

第2楽章 驚くべきことに、のっけから親指ポジションである。楽譜にはカッコ書きで、Sul La o Re ad lib. と書いてある。冒頭の親指ポジションは、A 線でも D 線でもどちらでもよいと書いてある。親指ポジションを使う利点は、16分音符からなる音階が滑らかに聞こえる点だろう。最初の不完全小節の B を親指ポジションのA線で使うならば、次の小節の Es もD線上の親指でとるということだろう。この Es に親指記号は書かれていないのだが、次の小節の4拍目のEsには親指記号がある。一方、最初の B をD線でとるなら、親指はD線とG線におき、次のEsはG線上の親指でとるということなのだろう。親指ポジションは高い音ではなくても使える のだろうが、私のような万年初心者にとっては難しい。

第3楽章

第4楽章

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタヘ長調 RV41を聴く2020/07/08 23:00:00

今回はへ長調 RV41 である。番号としては第2番である。

第1楽章 Largo。 付点リズムに気をつければ、なんとか弾けるのではないかと思う。

第2楽章 Allegro 速い楽章に出てくる高音弦と低音弦の交替が、この曲では主題として冒頭から登場する。低弦はDまでしか下りないのがちょっと不満だ。

第3楽章 Largo 定型のリズムが心地よい。細かなトリルがあるのがすこしやっかい。

第4楽章 Allegro 運動系だがバッテリーをきちんと取れれば大丈夫だと思う。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタ変ロ長調 RV45を聴く2020/07/09 23:00:00

今回は変ロ長調 RV45 である。番号としては第4番である。他のソナタと比べると変化が楽しめる。

第1楽章 Largo。 緩徐楽章だが、細かい音符や三連符がちりばめられていて、 他のソナタの緩徐楽章と比べると弾きにくい

第2楽章 Allegro 前半のシンコペーションと後半の3連符が好対照をなしている。

第3楽章 Largo 高音での歌にまじって、低音部の動きや重音が時折聞こえるのが安心する。

第4楽章 Allegro 後半は開放弦を利用したパッセージが出てきて、チェロの音色が楽しめる。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタ変ロ長調 RV42 を聴く2020/07/10 23:00:00

ヴィヴァルディのチェロソナタのうち今回はト短調 RV42 である。番号としては第7番である。調号は♭一つだけだが、E の音に都度♭がついていることが多いので、結果としてはト短調である。 それからこの曲が他のソナタと違うのは、それぞれの楽章で組曲のような名前がついていることだ。解説は追って示す。

第1楽章 PRELUDIO 。Largo。

第2楽章 ALLEMANDA。Andante

第3楽章 SARABANDA Largo

第4楽章 GIGUE Allegro