メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を聴く2020/08/04 23:00:00

最近はもっぱら弦楽四重奏曲を聴いている。このあいだ聴いたのはメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番ヘ短調 op.80 だった。私はメンデルスゾーンの作品は苦手で、なんかチャラチャラしているだけのような気がしていたからである。ただ、交響曲の一部とか、有名なヴァイオリン協奏曲とか、ニ短調のトリオはよく聴く機会があり、そのたびに感動した。今回の弦楽四重奏曲も、まだ私の中に食い込むところまではいっていないが、なかなかの作品ではないかと思った。

どこかで誰かがいったことには、西洋音楽史の中で今までの誰にもない新たな作曲方法論のない作曲家で有名なのは、バッハとメンデルスゾーンしかいないのだという。私は半ばその言を肯定しているが、バッハもメンデルスゾーンも結果として作品は名曲だからいいのではないかと思う。おそらくその誰かも同じことを思っているのだろう。

その後、上記のどこかの誰かを確認した。三枝成彰は「大作曲家の履歴書」の単行本において十数人の作曲家を取り上げている。そのなかで、メンデルスゾーンの項で次のように書いている(pp.97-98):

ところで、音楽/芸術というものは常に時代の先端を走っていくものしか認めないという。 ここ二百年来の芸術観において、 時代の潮流に背を背けながらも今日に名前が残っている作曲家はバッハとメンデルスゾーンだけである。 西洋では伝統を大切に守るだけでは満足せず、 今までの人間が所有しなかったものを新しく作り上げていくことにこそ価値を見いだしていたのである。 よって、いかに才能があったとしても前進とオリジナリティがないものは単なる 「伝統芸能者」であり、「音楽家」とはみなさない。 そんな価値観が当然とされるなかで、 この二人だけは例外なのだ。いや、時代背景を考えれば、 前向きであることが当然とされた世の中でそれを拒み、 なおかつ名声を得た作曲家はメンデルスゾーンだけといってよいだろう。

私の記憶があやふやだったことがよく分かった。