ラフマニノフの楽興の時 Op.16-2 を聴く2021/10/19 23:53:40

きのうに引き続き、ラフマニノフの楽興の時について書いてみる。Op.16-2は、難しいけれど、印象にあまり残らない、損な曲である。半音階がメロディーの主要部をなしていて、そのために覚えにくく、後に残りにくいからではないか。

この曲は、ラフマニノフが当初の作曲から 44 年を経て改訂版を作った。思い入れがあったのか。それとも何か当初の作品で気に入らない点があったのか。おそらく両方だろう。宮沢賢治だって何度も自分の作品を改訂している。作曲家の中では、ラフマニノフも改訂を多くする人だったようだ。改訂版の何が違うかは、作品を直接見た方がいいだろう。ここでは、典型的な箇所として 53 小節から 54 小節を比較する。まず初版である。

次に改訂版である。

和声の付け方の変更はない。しかし、リズムに関しては初版が右左とも 3 連符であったのにたいし、改訂版では右が3連符ではなく普通の16分音符になっている(2拍3連)。全体的に、初版は右手左手とも細かい音符はすべて3連符であるのに対し、改訂版では一部で左手と右手で2拍3連を作っている。もう一つの違いは、初版では4声を意識しているのに対し、改訂版では2声にとどめていることだ。これは、改訂版で声部を省略したというよりは、改訂版では声部を分けて楽譜にする必要性を吟味したうえで、また2拍3連とのからみも考慮して、声部をこの部分ではカットしたということだろう。

通常は改訂版が弾かれるということで実際私が見た演奏も改訂版だったが、正直私には耳で聴く限りでどちらかはわからなかった。やはり、メロディーが半音階主体なのでわかりにくい、という印象は消えないままだった。

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