フォーレの舟歌第7番を考える2021/11/22 20:52:58

フォーレの舟歌第7番を考える。この舟歌は、構造としては A-B-A-コーダの3部形式といってよい。この点では普通だが、全13曲の中で唯一の特徴がある。一つは 6/4 拍子という、4分音符を単位とする拍子である。他の舟歌はすべて 6/8 拍子か 9/8 拍子である。もう一つ特筆すべきことは、6/4 拍子であるにもかかわらず、主部は3拍子であることだ。普通、6/4拍子は、3拍ごとにまとめて数えるので2拍子系なのだが、この舟歌は最初からずっと、下の楽譜に挙げたような調子で進む。これは3拍子で書くのが普通だと思うが、フォーレはあくまでこれを2拍子として意識するように書いている(もしフォーレが3拍子として意識したならば、下の楽譜で、高声部の3拍目と4分音符と4拍めの2分音符をタイでつなぐ書き方はせず、合わせて3拍目の付点2分音符として書いたはずである)。2拍子を意識した音楽にしようとすれば、下の楽譜の中声部の4拍目にあたるA, C, C, E にアクセントを置くのだろうが、それはそれでグロテスクな印象を受けるだろう。要するに、難しいのである。

次にB部分の29小節から32小節を示す。アルペジオと音階による、繊細な表現が求められるところだ。30小節と32小節は最高音の A 音にまでアルペジオをかけてしまった。楽譜上はこの A 音はアルペジオの対象外なのだが、ここに示したように A 音もアルペジオの対象としてもいいように思える。もっともこれは、アマチュアの戯言である。