フォーレの「ピアノとオーケストラのための幻想曲」を調べる(3) ―2020/06/10 23:00:00

今回は練習記号2、29小節から調べる。ここから第1ヴァイオリン(譜例のVn1)に主題Bが登場する。
フォーレ「ピアノとオーケストラのための幻想曲」第29小節
この前半2小節はオクターブ上昇があり、さらに最初の小節には長2度の上昇・下降を伴う旋律がある。この、オクターブ上昇と2度の組み合わせは、ネクトゥーをはじめとするフォーレ研究家によって、悲壮感や崇高さが表されていると指摘されている。後半2小節は、ネクトゥーによれば全音音階の一部をなしていると指摘しているが、全音音階というよりはむしろ、独自の音階を用いて和声の精妙さを表している例とわたしはみなしたい。そして細かいことだが、ヴィオラだけが後半2小節、小節またがりのスラーが指定されていて、弦全体の滑らかさを保つような工夫がなされていることに注目したい。もっと細かいことをいえば、32小節の第3拍チェロバスの B と第4拍第1ヴァイオリンの H で禁則とされる対斜が起きていると指摘する向きがあるかもしれないが、フォーレならば何でも許されるのだ。さて、ピアノは何をしているのかというと、ひたすら六連符で管弦楽のメロディーの周りを縫うように装飾している。この装飾も純粋な繰り返しの箇所もあればわずかに手を変えている箇所もあり、息が抜けない。
なお、言い忘れたが、コントラバスを除く弦セクションはこの練習記号2から練習記号7の手前まで、弱音器(ミュート)をつけるよう、指示がある。

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