ソルの「魔笛の主題による変奏曲」を聴く2021/05/18 20:33:31

土曜日に行った、竹澤恭子のヴァイオリンと福田進一のギターを聴きに行くの感想文の続きを書くことにする。パガニーニ「チェントーネ・ディ・ソナタ」第1番に引き続き演奏されたのはギターソロでソル作曲の「魔笛の主題による変奏曲」であった。

この曲はギターの古典的ソロ曲として非常に有名で、アマチュアでこの曲が弾ければ素人離れしているといってもいいだろう。私はこの曲を聴くといつも、高校1年生のときのの音楽の授業で、この曲を披露してくれたクラスの友達を思い出す。

さて、この曲はタイトルからしてモーツァルトの歌劇「魔笛」の旋律を主題にしているのだが、はて、もとはどんな旋律だったろうかと立ち止まって思い出そうとしてみた。魔笛に限らず、私はオペラのことをほとんど知らないので思い出せるはずがないことに気が付くのはさほど時間がかからなかった。そこで、オペラのボーカルスコアと対比することにしたのだが、ここだということがわかるまでに小一時間を要した。下記の譜面がその場所だ。

モーツァルト「魔笛」

速さや調、伴奏の形態は当然違う。ちなみに原曲では、伴奏の分散和音はグロッケンシュピールが担う。それらの違いを差し引いても、メロディーが少し違う。まあ、ギターの傑作になった主題なのだから、文句は言うまい。

この曲を久しぶりに聴いて驚いたのは、序奏があることだった。すっかり忘れていた。この序奏についてはあらずもがなの印象もあるが、きっとソルは序奏の必要性を感じていたのだろう。私のような素人がいうことではあるまし。さて、その序奏から主題への入りはこうなっている。

ソル「魔笛の主題による変奏曲」主題

この、人好きのする旋律は、ソルのものだ。モーツァルトのもとの旋律よりも、付点音符のおかげで、より温かみが出ている。

その後は変奏曲の伝統で、音を細かくしたり、短調になったり、速くなったりして変化がつけられる。第5変奏の後半を寸足らずだが掲げる。

ソル「魔笛の主題による変奏曲」より第5変奏後半

私はこの曲を聴くと、ここの下段、一番上の E の音がきちんと響いてくれることを期待する。もちろん、福田進一はここをきちんと響かせていたが、そこに行くまでの細かな音の動きが少し手なりに進み過ぎているのではないか。少し遅くともいいので粒の立った音を期待していた。ぜいたくな望みだろうか。