フォーレの舟歌第4番を考える2021/11/19 18:48:36

フォーレの舟歌第4番変イ長調 Op.44 を考える。フォーレの舟歌全13曲の中では、この曲から入るのが一番いいのではないかと考える。まず、コンパクトである。これは小節数が短いという意味もあるし、繰り返しが多いので曲想がとらえやすいという意味もある。また、技術的にもそれほど難しくはなく、和声の面でも明快である。黒鍵が多い調でもあり、指捌きが容易である。全体は A-B-A の三部形式のコーダがついている。まず、Aにあたる部分の第1小節から第6小節を見てみよう。

Sheet Music for "舟歌第4番"舟歌第4番G. FauréAllegretto= 58

序奏2小節があるので左手と右手の準備が別々にできるのがうれしい。第4小節と第6小節でヘミオラが出てくるが、左手と右手で同一のリズムなのでとりやすい。A の部分はこの3小節から4小節の変奏であるといっていい。

次はBにあたる部分の開始である41小節から48小節を見てみよう。

Sheet Music for "舟歌第4番"舟歌第4番G. FauréAllegretto= 58leggierocantabile 高声は軽く、中声は歌うように、というフォーレの指示がよく当てはまる。では低声はどう扱えばよいか。もちろん、豊かに響かせるための工夫はしたいが、私が考えているのは別にあり、それは低声のアルペジオをなくすことである。アルペジオにするとどうしても舟歌のリズムが崩れてしまうと私は思っている。そこでアルペジオをなくす方法を考えたい。

例として45小節と46小節の低声を取り上げ、この部分を工夫してみよう。まず45小節は右手がEの単音を、左手がCGEの十度(スパン2)をとるように見える。事実、スパン2が左手で取れれば、それに越したことはない。しかし、手の小さい人であっても、ここは左をアルペジオにせず、右手のオクターブで取ることはできる。次のGCに移るのが難しいが、これは指捌き次第でどうにでもなる。そして次の左手にはECGisのスパン3の和音があり、これにはアルペジオが(私の持っている春秋社版では)ついている。ところが、このアルペジオもなくすことができる。それには、右手でGisをとればよい。右手の指捌きには工夫がいるが、同時打鍵によるリズムの明快化の利点が優ると思う。

なお、アルペジオがあるならそれでいいではないか、と思う向きがあるかもしれない。私はその意見に与しない。理由は、41小節から48小節が半音下になった以外は同じ音形が、49小節から56小節で繰り返されるからである。いま解説した音形が45小節と46小節に対応する音形が対応するのは53小節と54小節で、このときどちらもスパン3になっていることを確かめられたい。そして、私の持っている春秋社版では、53小節も54小節も、アルペジオ記号が書かれていない。

なお、スパン2とスパン3という用語について説明をしなかった。ピアノで根音の鍵盤と十度上の鍵盤がどちらも同じ白鍵かどちらも同じ黒鍵にあたる場合をスパン2という(例:Cと10度上のE、Esと10度上のGesなど)。ピアノで根音の鍵盤と長10度上の鍵盤が互いに白鍵と黒鍵の位置にあるときスパン3という(例:Desと10度上のF、Dと10度上のFisなど)。スパン1は、根音の鍵盤と短10度上の鍵盤が互いに白鍵と黒鍵の位置にあるときをいう(例:Cと10度上のEs、Cisと10度上のEなど)。

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