オーケストラの楽器を聴く2025/01/25 10:42:31

あるテレビ番組の録画を見ていたら、オーケストラの楽団員の内輪話を紹介していて、そのあとに自分の担当の楽器で有名な曲をちょっとだけ演奏する、という場面があった。チェリストは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番の前奏曲の最初とか、オーボエ奏者はチャイコフスキーのバレエ音楽「白鳥の湖」の「情景」とか、確かにその楽器で有名なフレーズを演奏していた。そして最後にチューバの番になった。チューバ奏者が演奏していたのは、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」であった。おそらく、ベルリオーズの幻想交響曲の第5楽章に出て来るところだろう。ところで不思議に思ったのは、チェロでも、オーボエでも、そしてほかの楽器でも字幕でその曲の作曲者と題名を表示していたのに、チューバの「怒りの日」(あるいはベルリオーズの「幻想交響曲」)では、それが出てこなかった。不思議に思って幻想交響曲のことを調べたら、ベルリオーズはチューバではなくオフィクレードという楽器で書いていたことがわかった。ということは、きっと番組の制作者は、もともとチューバオリジナルではない曲だったためのためらいがあって字幕を作らなかったのではないか、という仮説が立てられる。ただ、ふつうチューバという楽器で思い浮かぶ旋律は、私にとっては「怒りの日」である。