フォーレの「生きている水」を思い出す2021/12/29 23:59:59

フォーレのピアノ独奏曲はほとんどといっていいほどキャラクターピースであり、しかも標題がない。一方、ドビュッシーやラヴェルのピアノ独奏曲はほとんどに標題がある。名前が付けられているほうが有名になる公算が高く、その意味でフォーレは不運だった。たとえば、「水」が付けられているピアノ独奏曲を探すと、ドビュッシーには「水の反映」が、ラヴェルには「水の戯れ」があるのに、フォーレにはない。その代わり、フォーレの歌曲には水がつくものがいくつかある。その一つ、「水に漂う花」も名品だが、以下に楽譜を示す「生きている水」もすばらしい。ドビュッシーやラヴェルの水は鮮やかな水だが、フォーレの水は静かで、しかも変化する水を思わせる。最初の4小節しか書けなかったが、このあとピアノ音形が表す水はどんどん変わっていく。