フォーレの舟歌を考える ― 2021/11/15 23:59:59
久しぶりにフォーレのことを考えてみることにした。フォーレの作品にもいろいろがあるが、その中でピアノ作品、特に舟歌のことをこれから書いていこうと思う。
私は Twitter もやっているが、ごくたまにしかつぶやかない。最近のつぶやきは、NHK の番組の語りがおかしかったことについてである。たまたま、NHK のショパンコンクールの特集番組を録画していて、数日してその番組を見たのだった。ショパンのピアノ作品のジャンルに、ソナタのほかバラード、エチュード、ノクターンなどがある、と紹介していたのだが、バラードの紹介のときに映像と音声はショパンのバラードではなく、舟歌嬰へ長調 Op.60 だったのだ。これについて、ひさしぶりにつぶやいてみるいい機会だと思ったが、当然おかしいと思う人はいるわけで、すでに Twitter で少なくとも4人の方がつぶやいていた。私は録画していた情報に基づいてつぶやくわけで、鮮度は当然落ちている。しかたがないから、なぜこのような誤りをNHKがやらかしたかという想像も併せて2回に分けてつぶやいた。
ショパンは舟歌を1曲しか書かなかったが、フォーレは舟歌を13曲も書いた。私もホームページでフォーレの舟歌についてかなりの分量を書いたつもりだが、もう一度初心に戻ってフォーレの舟歌を見つめなおすもいいのではないかと思った。
舟歌とは何か、ということについては作曲者が「舟歌」として書いた作品はすべて舟歌である。多くの舟歌に共通する特徴としては、複合拍子であること、リズムが比較的単純なパターンで繰り返されること、舟の揺れを表わすかのようなアルペジオが使われること、などがある。これらの特徴が顕著であれば、舟歌とは題されていない作品も舟歌風に思われることがある。ショパンの作品では、舟歌風の作品として知られているものに夜想曲(ノクターン)第12番 ト長調 op.37-2がある。私の感触ではショパンの夜想曲のなかでは、夜想曲第6番 ト短調 op.15-3や夜想曲第16番 変ホ長調 op.55-2も舟歌に近いものを感じる。
フォーレの作品でいえば、13曲の舟歌の他に、小品集(ピエス・ブレヴズ)Op.84 にあるカプリッチョ Op.84-1やノクターン Op.84-8が舟歌の性格を帯びている(なお、後者は通常夜想曲13曲の系列に入れられ、夜想曲第8番と称されることが多い)。
フォーレの作品を弾いてみたい人の中には最初に弾く曲に困ることが多いのではないか。特に舟歌は13曲もあるが、フォーレ特有の転調ゆえの譜読みの難しさに加えて、アルペジオをなめらかに弾くために手指の柔軟性が求められるなど固有のむずかしさがある。そのため、舟歌にすぐに入るより、小品集の第1番と第8番をさらっておくことをお勧めする。リズムに慣れるとともに、左手と右手の受けわたしなどが練習できる。
次はカプリッチョの冒頭4小節である。舟歌の雰囲気が出ていると思う。
11小節から少し動きが出てくる。下の楽譜は11小節から14小節である。左手と右手の16音符を滑らかに受け渡せるように練習する必要がある。
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