フォーレの「平和が来た」を聴く2021/07/25 14:44:29

身近にいる人から「フォーレで嫌いな曲があるか」と聞かれて「嫌いな曲はないけれど、それほど好きではない曲はある」と答えた。

それほど好きではない、と私が偉そうにいうのはわけがあって、この「平和が来た(C'est la paix) Op.114」という歌は作曲家が不平不満をぶちまけながら作ったことが明らかになっている。ある雑誌が、一般募集した詩の一等賞には一流の作曲家が曲をつけるという企画をした。一等賞となった詩にフォーレは作曲しようとしたが、この詩が気に食わず、詩をあちこちいじった。

いじったあとでフォーレがつけた曲はどうだったか。平和の行進をイメージするかような3拍子の付点リズムではあるが、フォーレの代名詞である精妙な和声の移ろいはついぞ見られず、なんとか仕事をしました、というやる気のなさがわかるという、ある意味珍しい作例である。

詩の作者も、フォーレにあちこち自分の詩をいじられて気分を害し、本名を出すのを拒んだという話がある。(詩の作者であるGeorgette Debladisは筆名)。平和の名のもと実行される企画であっても、とかくいざこざが付きまとう、そう考えるのはひねくれすぎか。