バッハの無伴奏ヴァイオリン曲を続けて聴く2021/07/05 22:00:51

五嶋みどりによるバッハの無伴奏ヴァイオリン曲を前回に続いて聴いた。

今回は無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番ホ長調である。ニ短調はあのシャコンヌがあるので聴くほうも身構えないといけないが、こちらのホ長調は気楽に聴けるのでいい。とくに最初のプレリュードはゴキゲンだ。

このプレリュードを聴くと思い出すことがある。昔、NHKの教育テレビで楽器のおけいこ番組を夕方6時半から7時にかけて放映していたときのことだ。私が見るのは主に月曜日と水曜日のピアノの日だった。他は火曜日がヴァイオリン、木曜日がフルート、金曜日がギターだったような気がする。フルートの回は吉田雅夫氏が先生だったことを覚えている。なんとも贅沢である。

さて、たまたま火曜日の回のヴァイオリンを見ていたら、先生と生徒の初顔合わせだったようだった。先生がある生徒に向かって何か弾いてくださいと言って、生徒が弾き始めたのがこのバッハのホ長調プレシュ―ドで一通り弾き終えた。すごいものだと私が感心していると、先生が「今の曲では歌うようなフレーズづくりができるかわかりませんね。ほかの曲ではどうですか」と素っ気なく次に進んだことが今でも忘れられない。

それはともかく、この前奏曲のなかで特に好きな箇所が下記の楽譜、13小節からのところだ(およびここがイ長調に変わったあとの再現も含む)。シャコンヌのときにも話題にしたバリオラージュがここでも用いられていて、めまいがしそうな感覚に襲われたことを覚えている。この音形の繰り返しは、ライヒとかアダムズとかのミニマル・ミュージックの元祖ではないかとわたしは思っている。