借りてきた本にナポリの六度の記述を見つける2020/08/11 23:00:00

図書館から借りていた「音楽の科学」という本に、ナポリの和音の記述があった。pp.565-566にあるその記述は和声進行に関するものだ(この本の役は和音進行とあるが私は和声進行という用語のほうが適切だと思うので以下はそれで通す)。通常の和声進行とナポリの六度を含む和声進行とを比較したとある。その本の内容の結果とそれを読んでみての感想はどこかで書きたいと思う。

ただ読んで気になったことがある。和声進行におけるナポリの六度はサブドミナントの代用だから、和声進行の最後にナポリの六度を使うというのは私はおかしいと感じたのだった。

しかし、少し調べておかしくはないかもしれないと思いなおした。というのは偽終止の有名な例として、バッハのパッサカリアとフーガ BWV 582 のフーガ終結部の直前の偽終止があり、ここでの終止和声はなんとナポリの六度である。ということは、和声進行の末尾に現れても不思議はないということである。

ヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタホ短調 RV40 を聴く2020/07/04 23:00:00

渡辺和彦氏の「ヴァイオリン、チェロの名曲名演奏」(音楽之友社)という本を私は折に触れて読んでいる。フォーレの後期の室内楽を好きになれない、という氏の個人的な意見に反抗しながら、けっこうおもしろく読んでいる。コラムもいくつかあり、そのうち pp.37-41 は「バロック時代の名作」が開設されている。ここでまず、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲について簡単に解説されたのち、チェロについてこのように触れている。

ヴィヴァルディではチェロ・ソナタとチェロ協奏曲も見落とせない。チェロ・ソナタはメロディのきれいな曲が多く、おけいこ名曲として人気のイ短調以外の曲も鑑賞用にもっと聴かれてよい。

私が思うに、ここでのおけいこ名曲として人気なのはイ短調 RV43ではなくてホ短調 RV40 のほうではないかと思う。スズキメソッドで曲が載せられているのはホ短調のほうだからだ。ちなみに、私が持っているこのチェロソナタの演奏は、チェロと通奏低音(チェンバロと通奏低音)のものはまったくなく、フルニエの協奏曲に編曲されているバージョンである。もちろん、ヴィヴァルディはチェロ協奏曲も作っているが、ソナタが協奏曲仕立てになるほど、この RV40 は有名だし、名作だと思う。なお、ヴィヴァルディの真作と知られるチェロソナタは9曲あり、このホ短調のチェロソナタは第5番となっている。今日以降まとめてヴィヴァルディのチェロと通奏低音のためのソナタを概観する。引用する版は EDTIO MUSICA BUDAPEST(EMB)の原典版である。

この作品は4楽章からなる。追って楽譜を提示したい。

第1楽章 Adagio 。同音連続のテーマが耳に残る。主に高音域で歌われる。

第2楽章 Allegro。忙しいがあわてると高貴な雰囲気が損なわれる。弦をまたがる8分音符の動きに注意。最低音の C が響くと、低音フェチの私は喜ぶ。おまけにこの C はナポリの6度を決定づける音なので喜びは倍加する。

第3楽章 Largo。12/8 拍子ということもあってシチリアーノを思い出す。付点8分音符に32分音符というリズムは崩れやすいので、テンポのキープが肝心だ。

第4楽章 Allegro。8分音符の動きと 16 分音符の動きのそれぞれの違いを意識して、メリハリをつける。

デビルマンの歌を聞く2020/04/12 23:00:00

ナポリの六度を調べていたら、こんなページが見つかった。
https://guitarraskull.blogspot.com/2009/11/blog-post.html
ここでは、デビルマンの歌にはナポリの六度が使われている、と書かれている。YouTube で聞いてみたら、そのようにも聞こえるし、そうでないようにも聞こえる。ただ、ナポリの六度を使ったほうがかっこいい。耳コピーしてみた結果を abcjs で掲げてみた。「デビルアロー」は普通のサブドミナントのAmを使っておき、「デビルウィング」はナポリの六度でBbにしているのがミソである。

ナポリの六度を思い出す2020/04/11 23:00:00

私のこの音楽室には、ナポリの六度というカテゴリがある。しかし、このカテゴリには今まで2つの記事しかない。というのも、この曲はナポリの六度が使われている、と思ったことがほとんどないからだ。きっと、私が最近音楽を聞いていないからだけかもしれない。

さて、思い出せるナポリの六度を使った曲はないか、と頭を絞った結果、出てきたのはマイナーブルースとして有名な「イスラエル」だった。これは昔、ビル・エヴァンスのピアノで聴いてかっこいいと感激した曲だった。しかしジャズピアノは全く弾けず、もう数十年たってしまった。楽譜はわかれば載せる。

その後、楽譜を確認したところ私がナポリの六度だと思ったところはそうではなかった。私が Ebと思った箇所が、ルートが誤っていて正しくは Em7-5だったのだ。だからナポリの六度は成立しない。かっこいいことには変わりはないが、自分の耳のだめさ加減を晒すことになった。お恥ずかしい。

かわりに思い出したのがバッハのチェンバロ協奏曲のいくつかだったが、楽譜をよく見てみると典型例というにはちょっと苦しい。そのあたりの事情はあとで本館(まりんきょ学問所)のページで説明したい。

原博の前奏曲とフーガ第6番を分析する2019/10/14 20:38:14

原博の前奏曲とフーガから、第6番ニ短調を分析しようとしている。 前奏曲はパッサカリア形式である。フーガは3声である。 さてフーガの68小節から 69 小節にかけて、次のようなナポリの六度が表れる。下記は abcjs 形式による。本当はこの前後を含めて掲示できればよいのだが、その気力がない。また、3段譜を2段譜にするのがよいのだろうが、やはり気力がない。
abcjs の記譜法は、
http://www.ne.jp/asahi/music/marinkyo/ml/abc-regulo.html.ja
にある通りだ。

この譜面の前後と合わせると、このフーガの末尾は、J. S. バッハのフーガの技法 BWV 1080 のコンプラトゥンクス I を思わせる。

紀尾井ホール室内管弦楽団第109回定期演奏会2017/11/24 23:45:51

紀尾井ホール室内管弦楽団第109回定期演奏会に行ってきた。
メンデルスゾーン フィンガルの洞窟
シューマン     チェロ協奏曲
シューマン     交響曲第2番

メンデルスゾーンのこの曲は「ヘブリディーズ諸島」と呼ぶのが正しいのだが、物心ついたときから「フィンガルの洞窟」なのでそう記す。今までは冒頭と末尾しか聞いていなかったのがばれてしまった。途中で美しいクラリネットの二重奏があるのに、今回初めて気が付いた。いったい今まで何を聞いていたのだろう。
それはともかく、末尾の和声進行は強力なナポリの六度ではないか。さっそくネタに使わせてもらおう。

シューマンのチェロ協奏曲ではアントニオ・メネセスが登場した。冒頭のミラシドはシューマンが嫌いな私でも琴線に触れる。やはり実演は聞いてみるものだ。アンコールはメネセスによるバッハの無伴奏チェロ組曲第1番ト長調より「サラバンド」。拍節感を自分で作らなければいけない無伴奏の曲は結構苦手なのだが、はからずもそれを証明することになってしまった。

休憩のあとの交響曲第2番では、緩徐楽章の弦による弱音がことのほか気に入った。それまでのフォルテはこのためにあったのではなかったのかと思うほどだった。