資産形成を考える2022/11/17 23:59:59

十年以上前、銀行から電話がかかってくることがあった。「資産形成について考えてみませんか」というお誘いである。たいした預金もしていないのに資産形成をということばで誘いをかけてくるということは、わけがあると考えた。預金を元手にして貸し出す商売がうまくいかないから、資産形成ということばを使って投資をさせて、その投資の手数料で儲けようというたくらみではないかと疑った。それが事実かどうかはわからないが、たまには誘いにのってみてもいいかもしれないと思った。

私が受けた電話は甲銀行と乙銀行の2行からだった。まず、甲銀行の話を聞いてみることにした。平日しかないというので、当時の勤務先近くの甲銀行の支店に行き、昼休み説明を受けた。説明する行員からは「資産形成には投資です」ということを聞かされた。やはりそうか。「どんな投資に興味がありますか」と尋ねられたので、私は「世のため人のために活動するような投資はないでしょうか」と答えた。行員は困惑した表情を見せ「そのような目的の投資はありませんが、たとえば発展途上国への投資はどうでしょうか」と話を進めた。その投資の内容を聞いていたが、特に世のための人のためという意思は見えなかった。私は考えますといって話を終えた。その後、甲銀行から資産形成の話は来なかった。

私が発した「世のため人のための投資」ということばは、今であれば倫理的な(エシカルな)投資とか、持続可能な開発目標(SDGs)とか、いろいろな名前があるはずだ。十年以上前にそのような考えがなかったのだろうか。十年前でも、企業の社会的責任(CSR)ということばはあったし、さらにその前のバブルのころはメセナということばが出てきていたのに、投資となるとまったくそのようなことはなく、ひたすらリスクとリターンしかなかったというのはどういうことだったのだろうか。結局私にとってみれば甲銀行の話は迷惑しかなかった。