人の名前を思い出すのに時間を要する2021/06/30 21:48:01

最近録画したビデオを見てみた。ベルリンフィルの映像である。ベルリンフィルは毎年ヨーロッパの都市で演奏会をしているが、今年は新型コロナの影響でそれができなくなり、代わりに本拠地のベルリン・フィルハーモニー(というホール)で無観客のコンサートをすることにしたという。その映像をビデオに撮ったのだ。

オーケストラは舞台で演奏するのではなく、ホワイエでいろいろな曲を演奏していて、それが面白かった。カメラは当然指揮者や演奏者を追っている。その中でヴァイオリニストで東洋人と思われる端正な若者が映っていた。

よく見ると、若者はオーケストラでフォアシュピーラー(コンサートマスターの隣)の位置でヴァイオリンを弾いている。あれ、ひょっとしたら有名な日本人ではないだろうか、そういえば、この日本人がヴァイオリニストとして参加したフォーレの室内楽曲集があったよなあ、と5分考え続けた。やっとのことで、樫本大進だとわかった。それにしても、5分間は長すぎる。いろいろなことに思い出すのに時間がかかるのは老化の証拠というが、本当に老化したものだ。不思議なのは、思い出そうと努力すると時間はかかるが思い出せるということだ。

ちなみに、管楽器群に目を向けると目立つフルーティストがいた(フルーツではない、フルート奏者という意味だ)。こちらはすぐにエマニュエル・パユだとすぐに思い出せた。なぜ、樫本で時間がかかってパユが時間がかからなかったのか、これもまた不思議である。樫本は少し大人びた雰囲気になっていたからなかなか思い出せなかったのだろうか。

そういえば、昔いたオーケストラで、フルートを吹く団員に向かって、指揮者がからかいぎみに、「パユの真似して、こうやってかっこつけて吹いたりしたら」などといっていた。そんなこともあって、ベルリンフィルに有名なフルーティストのパユという人物がいたということは覚えていた。そういれば、昔ソリストとしてのパユが出たコンサートも録画したことがあった。確か武満の作品を演奏していたはずだ。だから、顔を見てパユだとわかったのだろう。

そういえばヴィオラにも東洋人とおぼしき顔立ちの女性がいた。ひょっとしたら清水直子かもしれないが、よくわからない。

ベルリンフィルはいろいろな曲を演奏していた。モーツァルトのノットゥルノというのは聴いたことがあるだろうかと思って聞いたら、4群のオーケストラに分かれる曲だそうで、初めて聴く曲だった。4群に分けて意味はわからず面白くなかった。もっとも、最近はモーツァルトの曲が面白くなくなってきている。これも加齢のせいだろうか。

樫本の名前が出てきたので考えたことは、国粋主義だった。今合衆国で大谷翔平が活躍しているのと同じように、がんばれ日本人、ということだ。しかし、日本人が各地で活躍するということをあまり喜ぶのもどうかと思うのだった。たとえば、オリンピックだ。国威発揚ということで、外国人を差別したりすることにつながらないか。スポーツは公平とされるルールによって勝ち負けが(いちおう)はっきりしているので戦争のはけ口とされやすく、それは嫌だ。では音楽ならいいのか。よくわからなくなってきた。

関係はほとんどないが、さいきん数学者である志村五郎が書いた数学の本を読んでいる。この人は、日本人でありながら日本人を超えた何かを持っている気がする。