チェロソナタ・エディションを聴く(CD 20 サン=サーンス)2020/10/27 23:00:00

チェロソナタ・エディションのCD 20 (サン=サーンス)を聴いている。サン=サーンスのチェロ・ソナタは、ロラン・ピドゥーのチェロとジャン・ユボーのピアノとの演奏をそれなりに聴いていたので後回しにしていた。この盤には第1番 Op.32と第2番 Op.123が収められている。

第1番の第1楽章はハ短調で 3/4 拍子だからだろうか、シューベルトのピアノソナタ ハ短調 D 958 の香りが感じられる。とくに、リズムの扱いやナポリの六度が出てくるところなどが特に気になる。だが、シューベルトの曲とは違い、こちらのほうはあっさり流れていく。第2楽章はチェロの歌としてはどこか足りない気がする。第3楽章はサン=サーンスらしい流麗な調べで、楽譜を見てみると、練習記号 23 のあたりのチェロがなかなか聞かせてくれる。今こうやって聞き直すと、チェロの曲としてはなかなかいい部類に入るのではないだろうか。ひょっとすると、チェロという楽器には保守的な作曲家の作風が似合うのではないだろうか。

第2番ヘ長調の第1楽章はチェロが高い音から始まるので、ブラームスのチェロソナタ第2番と似ているが、たぶん偶然の一致だろう。ブラームスの節回しは出てこないが、どこか前期ロマン派を思わせる旋律と和声が心地よい。第2楽章は聴いてみたら2拍子のスケルツォかと思い IMSLP で楽譜を見たら 6/8 拍子だった。痛い。正確にはスケルツォ・コン・ヴァリアツィオーニで、変奏曲付きスケルツォで、これは珍しい。冒頭はピアノのみがユニゾンで進行するのでこのまま続いたらショパンのピアノソナタ第2番のフィナーレか同じくショパンの前奏曲第14番かということになる。しかし、当たり前であるがこの曲はチェロソナタなので、途中でチェロが入ってくるし、そこでピアノはブロック和音をたたく伴奏になる。そうこうしているうち、途中できらびやかなピアノのアルペジオが入り、さすがサン=サーンス!と声をかけたくなる。チェロはピチカートで支えている。第3楽章はロマンツァ。ラフマニノフほどおセンチにはならないのがちょっと残念。第4楽章は気楽なフィナーレだが、なぜか気にいってしまった。

演奏について今までは触れてこなかったが、この盤のマリア・クリーゲル(チェロ)とフランソワ=ジョエル・ティオリエ(ピアノ)のコンビは、なかなかよいところまで行っていると思う。ただ、第1番第1楽章にはすこしテンポがずれたところがあるのが惜しい。クリーゲルは確かフォーレのチェロソナタの録音もあるはずだと思って調べたら、あるページに「NAXOSレーベルの人気者、クリーゲル」とあった。人気者、ねえ。