ウェルナーの教則本を考える(3) ― 2020/03/25 23:00:00
ウェルナーのチェロ教則本について話をつづける。私が持っているのは「東京楽譜出版社」という、今はおそらく存在しない会社の版である。 表表紙は左側にチェロのイラストがあり、右側にこうある。
PRACTICAL
METHOD
FOR
VIOLONCELLO
TOKYO MUSIC PUBLISHING COMPANY
奥付には発行年月日もない。© 1974 Tokyo Music Publishing Company. とある。おそらく私がこの本を買ったのは 1984 年か 1985 年のことだろう。
裏表紙には、定価 1200 円とある。
この本の誤植を挙げればきりがない。そのいくつかはすでにこのブログで示した。せっかくなので一つ示すと、10 ページで次中音部記号 Tenor-clef が紹介されているのだが、アルト記号(フォントを出すのが難しいので|3としておく)の3の中心が五線の真ん中に来ている。これではヴィオラの記号である。チェロで使う Tenor-clef は|3の3の中心は五線の一番上の線の上にこないといけない。
最後に、この本の巻頭言を引き写しておこう。
序 ウェルナーのチェロ教則本が、世界中のチェロ学習者にとって必修の教則本であることは万人知悉の事実です。それはまた何故でしょうか。
ウェルナーは長い年月音楽教育に専念しておりましたので、学習者にとって、技術の研究と同時に、拍子、旋律、和音の感覚が如何に大切であるかを充分に体験しています。
従って、教則本全体にその体験が生かされ、練習曲の全部に無駄がないのです。指使い、運弓は勿論のこと、左手の位置(ポジション)、あるいは音階と、余すところなく、繰返し、練習するよう構成され、上達への道をまちがいなく導く教則本だからです。
日本のチェロ学習者諸氏よ、学習者の気持ちをよく汲んで原書の正確な再現に細心の注意を払ってなされた本書「東京楽譜」のウェルナー教則本をもとめられんことを。
東京楽譜出版社