早川正昭の「日本の四季」より「秋」2017/05/25 21:51

早川正昭氏の「バロック風 日本の四季」は、弦楽合奏の貴重なレパートリーとして定着している。名前の通り、春、夏、秋、冬の4曲からなる。各曲はどれも3楽章形式となっている。バロック風、という前振りは、編曲手法がバロック的であるということに加え、実際に模倣した先人の作品もある。そして日本の四季ということは、季節にちなんだ日本の童謡や唱歌、歌曲を基にしていることを意味する。

さて、このたび八重洲室内アンサンブルで「秋」を取り上げることになった。この「秋」は、どんな作品を模倣しているのだろうか。なお、「秋」は第1楽章と第3楽章がヘ長調、第2楽章がニ短調である。

第1楽章は「虫の声」である。バロック作品で引用しているのは、まずヘンデルの合奏協奏曲ニ長調Op.6-5の第5楽章冒頭である。この冒頭はどちらも「ソミラ」で始まるので、作曲者がはめ込んだのだろう。なんとなくおかしい。そしてもう一つ、ヴィヴァルディの本家「四季」の「春」の第1楽章の中間部、16分音符でそよかぜを表す音形が、この「虫の声」では冒頭主題の一種の変奏になっている。

第2楽章は「荒城の月」である。ただ、私の限られた知識では基となるバロック作品がわからない。シチリアーナであることは確かで、ヘンデルの合奏協奏曲ハ短調Op.6-8の第5楽章が近いと思うのだが、確証はない。

第3楽章は「村祭り」。もとのイメージが強く、背景のバロック曲が浮かんでこない。それでも、中間部、短調に転調した部分で聞こえてくるのは、やはりヘンデルの合奏協奏曲である。おそらく、ニ短調Op.6-10の冒頭ではあるまいか。ヘンデルのこの原曲はフランス風序曲だから付点が強烈な印象を与えるのだが、村祭りのなかに織り込まれるとそのリズムの印象が和らいでいる。

楽譜を掲げたいが、早川氏の日本の四季には著作権がある。もととなるバロック曲のほうは追って掲げてみたい。