ヒナステラピアノソナタ第3番2008/01/29 22:23:03

第3番は力感あふれる単一楽章のソナタ。調性感が失われたのは第2番と同じ。第2番の第1楽章よりわずかに速度は遅いが、逆にとまらずに動き続ける力は強く感じる。ときどきつかわれるグリッサンドが効果的。

また、ヒナステラ初期のモチーフも垣間見られる。このモチーフは第1番のピアノソナタ第4楽章や、ハープ協奏曲第1楽章にも見られるもので、やはりヒナステラの刻印ともいえる。

ヒナステラ:トッカータ、ビリャンシーコとフーガ2008/01/29 22:29:14

トッカータ部分の冒頭はプラルトリラーで始まる。ちょうどバッハの「トッカータとフーガ」の冒頭に似ている。
その後、12のアメリカ風前奏曲op.12の第11曲「エイトール・ヴィラ=ロボスを讃えて」に酷似する旋律ほかが次々に現れる。全体にオルガンの壮麗さを強調している。

ビリャンシーコは一転して宥めるようなメロディーに変わる。ビリャンシーコとは、南米に伝わるクリスマスキャロルのこと。

フーガは、B-A-C-Hの主題に基づいて展開される。ただし、バッハの「フーガの技法」とも、またリストの曲とも異なる。最後は意外なほど素直に終わる。

もう少し聞き所はあるはずだ。

ヒナステラ:「暁の光は赤く染まり」の主題によるトッカータ2008/01/29 22:45:35

主題は自作から取られている。
ぶっきらぼうな和音の塊から成る主題を受けて、12の変奏とトッカータが奏される。
半音とリズムの組み合わせ、
うねる単旋律が果てしなく続く、
和声の厚みが増す、
などの変奏手法がとられている。

トッカータは、音型だけからいえばシューマンのピアノ曲であるトッカータと似ているが、その後の変容はすさまじい。

音の豪快さで知られるヒナステラだが、この変奏曲では厚みと薄さと両者の対比で勝負する曲となっている。この方面からヒナステラを評価する人は少ないし、私もよさがわからないが、もっと研究が深まるとよいと思う。