マルティヌー:ピアノ五重奏曲第1番2008/01/27 15:03:33

第1番は第2番よりコンパクトで、楽しい作品だ。
第1楽章は、冒頭こそ厳めしいものの、聴き進めていくと意外とほほえましい。打ち場所を間違えたのではないかと思わせるテンションの利いた和音と単純な機能和声の組み合わせが楽しい。
第2楽章は、端正なリズムに高音域で薄く伸びる旋律がさわやかだ。どこかショスタコービッチのピアノ五重奏曲の緩徐楽章に通じるところがある。
第3楽章は、ヘミオラが顔をのぞかせた後、民謡風のメロディーが出入りするとぼけた味わいスケルツォ。
第4楽章は、冒頭がストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」のある箇所に似ている。おそらく確信犯か、あるいは共通の動機を使ったのか。

マルティヌー:ピアノ五重奏曲第2番2008/01/27 15:34:30

第2番は第1番と比べて長いし、深刻なところも垣間見える。しかし、マルティヌーの基本路線はゴキゲンな音楽だと私は勝手に思っているので、これもゴキゲンに聴けばよい。
第1楽章は、跳ねる(というよりずっこけるリズム)が楽しい。
第2楽章は、トリルで締まる、風景の広がる楽章。
第3楽章は、アクセントの強いスケルツォ。
第4楽章は緊張感ある弦のみの緩やかな序奏(つれあい曰く、誰かの葬式みたい)のあとに、リズミックな踊りとなる。ピアノの扱いは派手になる。

私は2種類の録音を持っている。

ヨゼフ・パーレニーチェク、スメタナ四重奏団の演奏は、アンサンブルの緻密さが濃厚だ。
カレル・コシャーレク、マルティヌー四重奏団の演奏は、リズムのメリハリが効いている。

マルティヌー:2つのヴァイオリンとピアノのためのソナタ2008/01/27 15:47:11

第1楽章は、スカルラッティかクープランの作品に出てきそうな単純な音型。しかしあとであれよあれよと五音音階などに変容していく。

第2楽章は、実質緩徐楽章とフィナーレの2部。冒頭は、今度はバッハのインベンションが始まったかのようだ。フィナーレのアレグロはしゃべりたい放題で豊かだ。

ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集、3つの小品、マランボ2008/01/27 17:35:20

アルゼンチン舞曲集は、わりあい穏健な書法だが、後のソナタ第1番に通じるものがある。

1.「年老いた牛飼いの踊り」は、クラスターによる忙しない無窮動。
最後にお決まりのギター和音アルペジオが出て終わる。
2.「優雅な乙女の踊り」は、表題のイメージとよくあっているが、なぜか昼のメロドラマに出てきそうなメロディーである。
3.「さすらうガウチョの踊り」は最初のよくわからない動きが繰り返されたあとで(たとえばショパンのソナタ第2番フィナーレなど)日が差し込むように明るい旋律が浮かび上がる。最後にグリッサンドで華やかに締めくくる。

3つの小品も聞きやすい。
1.「クージョ地方風」は子守唄の形式に似ているが、わさびの効いた和音が挟まれる。
2.「北部地方風」も、冒頭は日本の(実は世界共通か)子守唄を思い起こさせる。中間部は、ほろ苦いドビュッシー風和音が登場する。
3.「南米風」はギターがよく似合うボサノバ風の和音のあとで、2拍子と3拍子が交替する躍動的な曲想となる。中間部は叙情的でテンポがゆれる内省的なバラードとなる。

マランボは、「年老いた牛飼いの踊り」をさらに躍動的にした曲想。
ひたすらクライマックスに向かって突進する。

ヒナステラ:12のアメリカ風前奏曲2008/01/27 17:47:55

12のアメリカ風前奏曲は、性格の異なる短い小品集。曲の難易度は比較的低い。

1.「アクセントのために」は、6/8拍子という複合拍子で、拍子の頭からずれたアクセントに面白さがある。
2.「悲歌」は、しっとりとした優しい歌。
3.「南米の踊り」は、同一の和音や同じモチーフの繰り返しで徐々に盛り上げる。
4.「ビダーラ」は、通常音階とは異なる音階によるメロディーのわずかな差異が聞き物。
5.「第1種5音音階短調による」は、日本の5音音階のような旋律が、カノンのように2声で流れる。
6.「ロベルト・ガルシア・モリージョを讃えて」では、低音部のトリルとアルペジョが最後のクラスタに向かって爆発する。
7.「オクターヴのために」では、ドビュッシーの同名曲よりあっさりとしていてしかも短い。
8.「フアン・ホセ・カストロを讃えて」は、短い子守唄。最後のアルペジョが美しい。表題人物は、アルゼンチンの作曲家。
9.「アーロン・コープランドを讃えて」は、表題作曲家のパステーシュ。躍動感はさすが。
10.「牧歌」は、同一音型の繰り返しに非和声音がもたらす不安感が心地よい。
11.「エイトール・ヴィラ=ロボスを讃えて」は、オクターブで進む無調旋律に挟まれる和音のリズム感が、表題作曲家を髣髴とさせる。
12.「第1種5音音階長調による」は、低音中心に最後のクライマックスに進む間に短9度の合いの手が効果的に入る。

ヒナステラ:ピアノソナタ第2番2008/01/27 20:57:58

ピアノソナタ第2番は、第1番に見られた調性感が消えている。

第1楽章は、低音と高音の華々しい対比が聞き物。
第2楽章は、神秘性を追求した静謐な曲。
第3楽章は、低音のクラスターが中心となって、時折高音域に向かって爆発する。

バルトークに似ているという評がある。そう言われればそのように聞こえる。
2008 01/27 20:57